営業マンがお仕事中に、心当たりが無いのに体調がおかしいと言い出されました。『ずっと心配を抱えたまま過ごすのも心が不健康になるだけですから、今すぐお医者さんに行かれたらどうですか?』お節介おばさんしてしまいました(した…と言うか、常にお節介おばさんですが)。
血液検査など受けてどこがどう悪いのかわかったので、やや安心とのことでした。早めに病院に行って良かったですねーと言いたいところですが、『これからは別の病院に通うことにするけど!』と、ご立腹の様子。『注射が巧いのは認めるけど、あの医者嫌い!』なんで?
『パテック・フィリップの時計なんてしてたんだ。自分の血がアイツの腕を飾ることになるのかと思うと腹が立つから。』お陰様で何とか食べていけます…程度の地味な人のためなら役に立ってもいいと思えそうですが、他人の無駄遣いを助長したと思うと、面白くありませんよね。
以前勤めていた不動産会社では、ブランド腕時計はオメガまで!という規則がございました。それをお客様の許容範囲の限界だと勝手に決めたのは、『ボーナスが立つ』と言われた高給取りの上司でしたが。そのオメガを、薄給でパートをこき使って浮いたお金がコレに化けたのか…と思いながら見ていたものでした。稼げる職に就いていないのは自分のせいですが、面白くないものは面白くないのです。お客様以外の人の前でも地味な方が損しない気がしました。
そんなことを思い出しつつ、おせっかいパートさんは営業マンを諭しました。『お客さんからどう思われるかって大切ですものね。華美な装飾品はせっかくのビジネスチャンスを逃してしまいますから。』『本当に嫌味な時計だった。絶対にもっと稼いであの医者を越えてやる!』
握り締められた左手を見ながら言いました。『その…宝石ギラギラのロレックス…』『コレ見ながら、いつかもっと高いの買ってやるって気持ちを何度も思い出せるよ。』最高級ではない高級腕時計ってそういう効果もあるみたいですね。もう外せって言えなくなってしまいました。
オメガの上司も、より上限に近いオメガを身につけることによって部下たちが、『あれぐらい高級なタイプを買えるように頑張るぞ!』って発奮する効果を狙っていたのかも知れません。安物だと、『出世してもあの程度の会社なんてやる気出ないなぁ』って思われるかも知れませんし?