動かざること
山のごとし…本当に、この人は営業する気があるんだろうか?と、首をかしげたくなるような珍しい営業マンが居ます。不動産業界に限らず、営業マンというのはたいてい、がっついて来るものです(お客様の半数はがっつかれるのが大嫌いであることは知っておいて損はないでしょうが)。『今日こうして不動と話して良かった…って思って頂けるよう頑張ります!』とか、『この不動にお任せ頂ければ…』とか、自分の名前を連呼して覚えてもらおうとしたり。
そのしずかなること
林のごとく、接客中の彼はもっぱら聞き役に回ります。かなりマイホームを買う気のあるお客様の場合、気持ちが前向きになっているものです。家庭不和で離婚の危機だと、一緒に住むための家を今から買おうと思わないはずですし、大金使ってより良い生活を手に入れたいと思っている場合は、近い将来に明るい家庭の様子が見えるのでしょう。しばしば、『何CCのバイクを買うからそのスペースを確保したい!』だの、『かわいいワンちゃん買って家族の一員として迎えたい♪』だの、営業マンに新居の生活の夢を語ることさえあります。
頭金が十分貯まっているし、ローンの審査もラクに通りそう…そんなオイシイお客様が、幸せいっぱい夢いっぱいなのに、突然マリッジブルーのように躊躇することがあります。『言っても、ウチ、
転勤族 だからなぁ…。』追い出されない限り社宅に住んでいれば良いのではないか、と?
そんな時、彼は突然
火のごとく (
お菓子をかすめ取ります) 熱弁します。『いつ転勤になるかわからない、という不安はよくわかります。』冒頭でお客様の意見は肯定しておきます。『ただ、私の見てきた方々のような失敗を、お客様には経験して頂きたくないのです。』買えるのに転勤が怖いから買うのやめたというお客さんは多いのですが…。何に失敗されたのでしょう?
買わなくても良かった時は確かに買えた。ただ、転勤の恐れがなくなった時点では買えなくなってしまった。…そういう失敗です。若いビジネスマンで成人病を患っている方はほとんどおられないでしょうが、中年になってくると色々と病気が出てきます。健康でないと
団信 に入れないからローンが組めなくなるパターン。大手企業は倒産しにくいですが、会社を維持するために人を飛ばします。出向させたり転籍させたり。有利なローンが組みづらくなるパターン。
『やっぱり、自分にとっての買い時は今しか無いんだ!』唯一の懸念、『自分は買えるけど買ってはいけない立場なのではないか?』という部分が彼の熱弁のお陰で払拭され、お客様は迷うことなくマイホームを購入なさいます。不安材料が消えてから契約にいたるのは
風のようにスピーディー。最初から最後までがっつき続けるのではなく、こんなメリハリのある営業を、きっとお客様は求めている…はず。(風林火山の順番どおりに書けなかったことはスルーして下さい。)
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