一般人より警戒心の強いことが求められる不動産屋にあるまじき行為でしたが、その時間は確実に主人だと思い、勢いよく玄関のドアを開けてしまいました。鈍い音と手ごたえを感じたためゆっくり引いたあと、そ〜っと再度開いてみると、隣のおばさんが額に手を当てて顔をしかめているのが見えました。…私のせい?主人以外の人が立っているとは予想していなかったため、私は驚いて言葉も出なかったのですが、おばさんは気を取り直して話し始めました。
『突然すみません。』こちらの方こそ突然開けてすみません…謝る機会を逃してしまいました。『明日引越すことになったので、ご挨拶に伺いました。』『あら!』『こんな時期にヘンな話でしょう?』確信していましたが、一応、聞いてみました。『どちらへ引っ越されるのですか?』家から徒歩1分の、『△△マンションです。』…やっぱりね。
「今ならギリギリ、新築って言えるじゃないですか?一体いくら値切ったんですか?」
「ご主人の収入で最上階は無理ですよね。○万で売りに出てた方の空き部屋でしょう?」
…色々聞きたい衝動にかられましたが、こらえました。大人ですから。
『おめでとうございます!』決済っていい話ですよね。でも、普通は引っ越しの挨拶に来た人には言わないみたいですね。キョトンとされてしまいました。私は隣人として何とコメントすべきだったのでしょう?しばらく考えました。『あんな綺麗なマンションに住めるなんて、羨ましい〜。』『でもね、これからローンの返済に苦しむんですよ。』なんでお住まいを買ったばかりの人って、こういうセリフを誇らしげにおっしゃるんでしょうね?とにもかくにも、おめでとうございます。
逢ったことも無いなんて悲しいことは言わないでね。

私とあなたは毎日ここで逢っているのですから・・・