男前に通された部屋は、不動産屋の会議室。好きなところにおかけ下さいと言われ、ドア近くの席を選びました。当時は私、不動産屋じゃなかったので、
ブラックコーヒー飲めませんでした。本当はミルクもお砂糖も2つ頂きたかったのですが、親会社の顧客のクセに変な遠慮をして、無理しながら苦いコーヒーを頂きました。
男前は立て板に水を流すようにスラスラと話しながら、某金融機関とは別の金融機関のパンフレットを並べました。『今なら低金利でローンが組めるんです。チャンスですよ奥様!』『1年間○%であとは変動ですか?まぁ色々あるんですね…。それより私、買うとかいう物件をよく知らないのですが。今朝あげた謄本だけ持ってます。住居表示は、甲区の住所のとおりです。』
仕事速かったです。色々資料を出してきて下さいました。『ついでに5年固定のフルローンで全部の費用計算してみて下さいます?』不動産屋になった今でも営業マンが電卓叩く姿に見とれます。男前が電卓叩く姿を初めて見た主婦はノックアウト寸前です。『ご主人の先輩とそろって弊社に任せて頂けるなら、通常3%+6万円の手数料を2%にします。先方は好きな値段をつけてくるはずですので、ご主人の味方になる弊社に全て任せるように仕向けて下さい。』
さっき出会ったばかりのあなたを、男前だからって全幅信頼しろと?ちょっと怪訝な顔をしてみると、あの無機質な謄本を両手で持ち上げ、突然恍惚とした顔をなさいました。『い〜い物件ですねぇ。』不動産屋になった今でも、私は謄本だけでそんな表情になる能力を持ち合わせておりません。彼はきっと天才です。『ところで、さっき頂いた間取り図によると南端の部屋みたいですが、なぜ南側にバルコニーも窓もないのでしょう?』『そりゃ、眺望が…
もごもご…』
物件のお話より、男前との対話が楽しいですね。もうちょっと追い詰めてみましょうか?
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