繁忙期は別として、不動産屋さんの事務仕事は暇な時期もございます。業務時間中に連休に行く旅行先のことを調べていようと、居眠りしていようと、パートは見て見ぬフリして気付いていない素振りをします。若い方は退社後もお忙しいのでしょうから。もちろん、怒られそうな人にバレるかもって思った時には、『〇〇さーん!何度も聞いてすみません!!また置き場所がどこかわからなくなっちゃったんですけど……。』と、大きな声で起こした上で歩かせて目を覚まして頂く等の荒業もお出ししますが、何か?
日当たりの良いお席に、叱ってくれる人が居ないぐらいの立場の最年長社員さんがおられまして、Kのカードにお顔の雰囲気が似ていらっしゃる等の理由から、『トランプさん』って心の中であだ名を付けてきました。お席の後ろ側から見るとパソコンの画面にトランプの札が広がってた!ってことが3回ぐらいあってから、なんだか気まずくて、あまり見ないようにしてきたものです。午後はだいたいトランプの出す札を考えているうちに?眠っておいででしたし。そもそも下っ端パートから一番遠いお席ですし。
トランプさんを私が少々敬遠していることには気づいておられたようです。彼のパソコン画面が見えない方向から、『トランプさん(仮名)!』ってお声を掛けると、とても意外そうな顔をされました。『突然すみません、不動です。今年一年お世話になりました。来年も又、よろしくお願いいたします。』『え?え?いつも向こうの端からでっかい声でお先に失礼しまーす!って言いながら先に帰っちゃうパートさんだよね?どうしたの?あっ、みんな居ないから代わりに俺に話しかけてきたの?』
誰も叱ることが出来ないぐらい偉い方に皆さんの代わり呼ばわりなんて恐れ多い!『あっ、いえ、そのっ。私、今年の出勤は今日が最後なもので。年末の挨拶ぐらいは遠くからの大声じゃなくて丁寧にしようかと思いまして…。』『そうだよねぇ。みんな会議であと一時間は帰って来ないし、待ってられないよねぇ。』普段どう接していれば、お昼寝の邪魔もせず、敬遠している感じにもならずに済んだのかわからないままですが。間もなくお誕生日を迎えられて定年退職されました。今までで一番長くて最後の会話が『みんなの代わり』っぽい失礼な感じで終わってしまったことが悔やまれます。