立地は最高。時給は最低賃金プラス数円。時間は扶養範囲内だけどラクじゃない。…そんな不動産会社でのお話です(物件を紹介する場合は最上級の単語で賛美しちゃダメだけど、立地だけ最高だったなと記憶しているので、敢えて強い言葉を使いました)。
外出先で爽やかに振舞っている営業マンが多かったけど、24時間婚活中の彼は社内でも爽やかな笑顔を見せていました。『パートさんたちにいい物を配りたいと思いまーす。ちゃんと人数分持ってきましたよ♪』取引先から引き受けてきたらしい、クレジットカードの申込書です。ご主人いい所に務めておられるパートさんばかりなので、審査は通りそうですよね。
『あれ?不動さん怪訝そうな顔してどうしたの?』『これ、記入しないといけないんでしょう?』『記入するだけでお小遣いもらえるんだから、悪い話じゃないでしょ?年会費無料だし。』『あー…まー…じゃー…一応持って帰りますが、何か?』『もっと嬉しそうにしてよ。』
当然、放置していました。数日後、『ねえ、なんで誰も記入済みの申込書を持ってきてくれないの?』『そりゃあ、書かないといけないからでしょう。』『お金かからないし、入るだけでクオカードがもらえるのに?』『御存知なかったですか?私わりと面倒臭がりなんですよ。』『不動さんはそうにしても、全員持ってきてくれないのはなんでなの?』『記入するのが面倒だからです。』『ね、俺個人からもクオカードあげるからさ、不動さんだけでも入ってよ。』『……そんなこと言われたら一人で二枚書いちゃう♪ナンチャッテ…』『いや、四枚も出せないし、一人分で十分だから。』

(c) .foto project家計の足しにあまりならない程度の収入しかないのに拘束時間は短くなくて疲れる職場じゃないですか。パートさんたちのご主人が勤めてるのはそんなにブラックじゃない会社だし、定時で上がって『いただきまーす!』って言いながら帰ってくるんですよ。それに間に合うように食事の支度をすべく、時間と体力を温存させることの方が重要で、コンビニ寄らないからクオカードいらないし、銀行口座の番号とか記入する時間も取りたくない…って思うのが普通なのでしょう。
などという女の本音を未婚の彼が知るはずもなく、説明するのも面倒だし、なんか見ていて気の毒に思えてきたし。予定の二倍となったクオカードと引き換えに、申込書をお渡ししました。『あの、審査通らなかったらごめんなさいね。』『これで審査落とす会社なんて無いでしょ♪』…見ないでっ!『いい物を配る』って上から目線じゃなくて、『俺(オフィスでは私が望ましい)を助けると思って書いて下さい』って下から目線で頼めば、他のパートさんたちにスルーされずに済んだかも知れませんが、不慣れな営業マンに女心を説明するのも面倒なので割愛しました。
何日経過してからでしょうか。その取引先からのお電話を取りました。『○○不動産、不動でございます。…あ、●●様、いつも営業マンがお世話になっております。あいにく今は…』『いえ、今回は不動さん個人に用が有るんです。』内容は、審査に落ちたという連絡でした。『もしかして、過去に全く同じカードを作ってませんか?●年前、カード入会記念図書券プレゼントキャンペーンの頃です。』年会費無料なのに何かもらえるって言われたらホイホイ個人情報を晒してしまう、安い女が高貴なパートさんたちの中に混ざっていてすみませんでした。