現住建造物の有る所より無い所の方が、交渉の手間が省ける分、新しい建物を建築しやすいと言えるでしょう。パートが交渉の場に出ることはございませんが、調査のお手伝いをすることはございます。営業マンの指示は、『地図の、この色塗った所、一通り調べて。』…でした。廃屋の名前が土壌汚染されてそうなイメージで気は進みませんでしたが、お仕事なので仕方ありません。住居表示から公図上で地番を特定して謄本を確認(若干レトロな不動産業界用語を使いたがる世代です)しました。『……。一応調べましたが、本当にこちらで宜しいんですか?』
『何か見つかった?』『まず、一部の地目がチショーなんです。』『チショー?』『ネットスラングとかじゃありません。』『??』『ため池じゃない貯留池で、やはり池に沼と書く、池沼です。』『あ、池に沼か、なるほど。』『現況は宅地かも知れませんけど、地盤が心配なことと…。』『そもそもこの建物がさぁ…。』『あら、御存知でしたか。駅も学校も公園も遠いし、マンションディベロッパーさんも敬遠されるのではないかな?とも思いますし。調べられるところまでは調べてはみますけど…。』『調査は時間あったらでいいよ。』暇だったので無駄に調査して終わりました。
駅も学校も公園も遠いのに、周辺では建売業者さんが建てた一戸建てを建設していました(『遠い』か『近い』かの感じ方って人それぞれ?)。買い手のついていない廃屋の周りに、新築一戸建てを求めて引っ越してきた方々がガーデニングを楽しむのどかな風景が広がりました。そこにマンションは建たないでしょう。日照は確保されて毎年お花を咲かせられそうだな、と、ほほえましく眺めていたものです。あとからマンションなんか建設しようものなら、『マンション建設反対!』とか看板出したりする家が出てくるでしょう?そういう眺めは好きじゃないので。
その後、『建設反対!』看板が出てきました。『遊戯施設なんかこの町にいらない!』って書いてあります。何年も売れずに困っていた土地が何とかなって良かったねという気持ちと、どうせ反対されるならマンションって書いてある方が眺めよくない?って気持ちを抱いてしまいました。浅く調査すると地目変更後しか見られないかも知れません。地盤の弱い所に建ったマンションを買って後悔する人が出なくて良かったという気もしています。廃屋も、建設反対看板も、遊戯施設も、いずれも私の好みの眺めではないのですが、何か?